4/10 (火)
2時過ぎに寝たせいか、いつもより1時間遅い8時に起床。
ミヒャエルも慌てて起きてきてZを幼稚園に連れて行く準備をしている。Zにだけ朝食を食べさせ、9時頃彼女を自転車に乗せて出て行き、しばらくして朝食用のパン、ソーセージ、ハム、ジュースを買って戻ってくる。それを食べながら今日の予定を決め、10時過ぎに3人で外出。地下鉄でRomerまで行き、フランクフルトに来ると必ず行く近代美術館に行く。
美術館は一部展示品を入れ換えてる最中であったため入れないスペースがいくつかあるとの事だったが、その分入館料が3ユーロと、かなり安くなっていた(確か通常は8ユーロ)。入れないスペースがあるといっても7割くらいは普通に見られる。
3年前に来た時に比べると展示品がかなり換わっていたが、河原温の作品は前と換わらずに展示してあった。他にヨーゼフボイスとナムジュンパイクの作品も換わらず展示されてる(この3人の作品は5年前に来た時からずーっと同じ場所に展示されてる)。ドイツでの河原温の評価はその二人と同じという事か?そういや大学で助手をやっていた頃、デュッセルドルフから来ていた留学生が(ミヒャエルではない)、ドイツでは河原温はスーパースターだと言ってたな。あと川俣正も。
この美術館で初めてMaurizio Cattelanの作品を見た。Maurizio Cattelan。名前は知らなくても、彼の、ローマ法王が隕石の下敷きになっている作品を知ってる人は多いと思う。
ここに展示されてる彼の作品もすごかった。この美術館は美術館自体も面白い形(ショートケーキっぽい形)をしていて有名。おそらく有名な建築家がデザインしたのだろうが、その美術館の壁に穴をあけてそこに机を突き刺し、外に出た天板の上にチョコレートケーキが置いてある。訳が分からん。けど、すごい。面白い。
他にも今回初めて見た作品で、いくつか気になる作品があったので名前と作品名をチェック。
美術館を出た後、マントラ(久保田の前の部屋の家主)の彼女、Nがキュレーターを務める画廊に行く。
ちょうどそのマントラの作品が展示されていた。
展示室を一通り見た後、スタッフルームに行き、Nに自己紹介。そして久保田と3人で雑談。話し方が静かでやさしい、すごく素敵な女性だった。
30分程話をした後、画廊を出てもう一つの美術館に行く。が、ここはあまり面白くなかった。
その後、近くの市場に行き、ソーセージとパン、コーラで昼食をとってから、昨晩蛭子のマンガを渡した時にフランクフルトにも日本書籍専門店があると聞いたので、そこに行った。パリの日本書籍専門店には、友人松本次郎のマンガが売られていたから、フランクフルトでも売ってるんじゃなかろうかと期待したのだが、パリの日本書籍専門店より小さかったせいか、残念ながら次郎のマンガはなかった(デュッセルドルフには日本人がたくさんいるのでもしかするとそこに行けば売ってる店があるかも)。
ビックリしたのは値段。日本円で記されている値段の3倍くらいの値段で売られている。輸送費とかあるんでしょうけど、でも3倍ってどうなんでしょう?ちなみに3年前、パリでは2倍くらいだった。
ミヒャエルが、日本の本は装丁がとてもきれいだと言って、気になる本を手に取っては隅々まで見ていた。彼は自分の作品の制作だけでなく、他の作家のカタログを作ったり、エディトリアルデザインもやっている。そんな人に日本の本はきれいだと言われるのは、日本人として嬉しかった。君の国の車も素晴らしいよ、ミヒャエル。
今晩はオレが天ぷらとざるそば、久保田がだし巻き卵を作って二人に和食をご馳走する事になっている。そのため日本からめんつゆとそばと天ぷら粉を持参してきた。それくらいのものならフランクフルトで手に入るが、本と同じく信じられん程高いので持参した(天ぷら粉は麻薬に見えなくもないからそんな事でトラブったらどうしようかとも思ったが)。
本屋を出た後、中央駅前の、タイの食材を中心にアジア各国の食品を扱うスーパーに行き、エビの他、天ぷらに出来そうな食材を買いそろえ、部屋に戻る。
4時、幼稚園にZを迎えに行く途中、ミヒャエルから、ドイツの、子供が産まれた時の育児支援や幼稚園の授業料などについての話を聞いた。嫁が調べた川崎の私立保育園の授業料はひと月8万円(公立は3万くらいだが、オレと嫁の就労状況ではウチの子を公立に入園させられる可能性はほとんどない、と区の職員に言われた)。という事は年間約100万円。出せませんそんな金。日本人のオレでも驚く金額だが、それをミヒャエルに言うと、「Are you serious?」と言われるくらいに驚いてた。はい、シリアスです。彼はZの授業料としてひと月に150ユーロ(約24000円)払ってるそうだが、ドイツでは子供が産まれるとその子が18歳になるまで毎月100ユーロ(約16000円)の支援があるんだそうで、その他に母親は出産後1年間は毎月500(約80000円)ユーロ受給出来るらしい。日本は出産した時に35万円の支給があるのと、子供が12歳(もしかすると10歳。最近変わった)になるまで月々たった5千円の支給しかない。
しかも出産時の35万は出産費用にあてるお金だし。ドイツには出産費用なんてものは必要ない。医療費は無料です。学費も必要なし。
羨ましい・・・。
が、その分、この国では収入の6割くらいは税金として徴収されるらしい。だから、たとえば30万円の収入があっても18万円は税金としてとられ、手元に残るのは12万。そこから家賃を払ったら、フランクフルトの家賃の相場なら残っても1〜2万じゃなかろうか。
食費は・・・どうするんだ?
ある一定額以下の低所得者は税金を免除あるいは軽減されるとの事なので、彼らにはありがたいシステムかもしれんが、一定以上の収入がある人には負担も大きい。
そう考えると、日本のシステムとドイツのシステム、どちらがいいのか分からなくなる。しかし、保育園の授業料が年間100万円てのはおかしいでしょ。
幼稚園でZを拾って部屋に帰る途中、近くのスーパーに寄って天ぷらに使う油とだし巻き卵用の卵を買ってから部屋に戻り、すぐに食事の準備。
エビ好きのZが調理前で殻がまだ青いエビを見て「この青いエビはピンクに変わるんでしょ?変わるわよね?」と何度も訊いてきたので、ピンクにならなかったらどうしようかと不安になったが、ちゃんとピンク色になったエビ天、他数種類の天ぷらとざるそば、それから久保田が作った出し巻き卵が揃ったところで夕食。彼女に、そばはこうして食べるんだよと言ってズルズル音をたてて食べてみせたら、最初ニタニタ見てるだけでなかなか食べなかったけど、食べ始めると音をたてながらあっという間に完食。いやいや嬉しいじゃないですか。
どれもこれも少し多めに作った気がしていたが、4人であっという間に食べてしまった。ミヒャエルも「子供は正直だぞ」と言って、エビ6尾のしっぽ以外、何も残ってないZの皿を指さして、美味しかったとアピールしてくれた。
食後あまり時間が経たないうちにZは寝た。その後は昨日と同じように男3人、玄米茶片手にキッチンで雑談。
ミヒャエルが、「クボタ、今までやった仕事で一番変わった仕事は何だ?」と訊いたところ久保田が「making porn movie.(エロビデオ制作)」と答え、続けて「イミテーションスペルマ、ピッピッ」とか言って、その仕事がスポイトに入った疑似精子を手渡す役目だったという説明をジェスチャーで表現したのでミヒャエルが涙を流しながら笑ってた。久保田はどこに行ってもこうして笑いを作って人気者になる。前は下痢糞を「ジャクソンポロックシット」と表現し、やはり外国人アーティストの大爆笑を誘った事があるし。しかし、「イミテーションスペルマ、ピッピッ」はずるいぞ久保田。
そのあと、その話に触発されたミヒャエルが話した話もウケたが、残念ながら疑似精子手渡し係の久保田の話には劣る。ミヒャエルもそう思ったらしく「お前の勝ちだ」と言った。
そこから4時間近くそんな馬鹿話をした後、就寝。
今日も久保田と同じベッド。「イミテーションスペルマ、ピッピッ」が頭の中でこだまする・・・。
Comments