「酒で乱れる」と書いて酒乱。
その言葉を知ってはいたけど、本当にそういう人間がいるのを大学4年の時に知った。あまりの暴れっぷりに身の危険を感じて警察を呼んだ。
今回のネタはその時の記憶を書いたのだけど、思い出しながら書いてたら次々に記憶がよみがえり、すごく長くなった。
あれはなかなかレアな経験だからこのまま記憶から消えないのかも。
なので、二〜三回に分けて更新します。
まずその男が酒乱と化したイベントについて。
<男神輿>
母校武蔵野美術大学では11月の1週目に芸術祭(文化祭)が開催され、その期間中、オレの出身学科である彫刻学科は男子学生がふんどし一丁&モヒカン頭になって男神輿と呼ばれる神輿を担ぐイベントがある。強制参加ではないけど、参加しないと学科内での市民権はないに等しくなる事もあって、参加率はかなり高い。
男神輿のご神体は男根。男性器である。その由来は分からない。とにかく男根がご神体。芸術祭が開催される4日間(現在は3日間らしい)のうち2日目、3日目にキャンパス内を練り歩き、人が沢山いるところでは神輿をぐるぐる回して、そこで一升瓶の日本酒を回し飲みしながら「武蔵野音頭」「えんやこらせ」という歌を歌う。季節的にふんどし一丁ではキツい時期だし、ふんどし一丁&モヒカンという姿で2メートル程の巨大男根を担ぎ衆目の前に出るのは素面ではなかなか出来ないし、何より祭りの最中だ。自然と酒が進む。
最終日、男神輿はキャンパスの外に出て普段お世話になってる酒屋さんと居酒屋に出向いてお礼の意味を込めてそこの前でも神輿を回し、歌を歌う。その後キャンパスに戻って狭い模擬店街に入り込み、神輿を進めるというクライマックスがある。狭い中、無理矢理神輿を進めるから通り道にある店は大抵壊れるし、さらにそんな状況では神輿がぶつかってではなく、学生自身が店の壁を蹴り破ったり、殴って穴を空けたりし始め、ちょっとした?暴動に発展する。オレは映画「タクシードライバー」を観て以来モヒカンには大いに興味があったので参加を希望したものの、直前にそれを聞いて「なんてひどい事をするんだ」と思い、ドキドキしながら参加したのだけど、参加してみるとこの上なく面白く、最終日のクライマックスも、小心者のオレは殴ったり蹴ったりして店を壊す事はしなかったけど(←本当だぞ)、狭い模擬店街の中を「メキメキメキ!!」と音を立てて店を壊しながら、無理矢理神輿を進めていくのはかなりエキサイティングな状況で、当初「なんてひどい事をするんだ」と思ってたのが「なんて楽しいんだ」に変わって、神輿を担いだ。オレは偽善者でした。
模擬店側は、神輿を担ぐ野郎どもの風貌や、1学年30人程の小さな学科ながらその時ばかりは50人程の軍団に膨れ上がるから、その雰囲気に押されて店を壊されても泣き寝入りする店もあるけど、やられっぱなしで黙ってない店ももちろんあり、あちこちで喧嘩が始まる。幸い、オレが学部在籍中の4年間では芸術祭実行委員が手に負えなくなって大学に泣きつく程の大事に至る事はなかったけど、それでも必ず流血沙汰にはなってた。ちなみに久保田が主要メンバーになってからの男神輿は激しさが増す。
2年生までは、そんな強引なクライマックスも芸術祭という事で多めに見てもらえてるのかと思っていた。実際、そういう部分も多くあるのだけど、しかし3年の神輿の後に、最終日を迎える前日、つまり芸術祭の3日目に男神輿の代表者が神輿を通すルートにある模擬店一軒一軒に翌日神輿が通る旨話し、暗に「貴方の店は明日壊れますよ♡」と伝えるのをOBから教えてもらった。そのため4年の時に神輿を仕切ってたオレは、一緒にいろいろと準備をしてた次郎とともに3日目に模擬店一軒一軒に翌日の神輿の予定を伝え、更に芸術祭実行委員に促されて、その年、例年以上に狭くなった模擬店街の通路を神輿が本当に通れるか、20時以降(芸術祭中、模擬店街は20時に強制消灯され、実行委員以外の全ての人がキャンパスから追い出される)に実行委員の手を借りて、シミュレーションをした。予想通り通れなくて、急きょ神輿の持ち手を少し切って何とか通れるサイズにしたのだが、暴動のように見えてた神輿も、こうして一応は芸術祭実行委員の下である程度コントロールされてるのをその時に知った。
まあでも、久保田も以前日記に書いてたけど、あれに参加したか否かでその後の人生の歩みに影響があるように思う。あれがなかったらオレは当初の大学進学の目的通り、教員になってたかもしれない。
続く