午後7時頃。
玄関チャイムが鳴り、嫁がインターホンで応対後玄関に行った。
オレはリビングでテレビを見ていたのだけどドア越しに何かのセールスである雰囲気を感じたので、携帯で自宅の電話に電話をかけ、「電話鳴ってるので失礼致します」という流れで客を帰し、嫁をリビングに戻そうと考えた。しかし、客は一向に気にしていない様子。もう一度鳴らす。同じ。なんだかんだと10分程経ち、嫁が上司の名前を教えてくれとか、そんな事を言ってるのが聞こえ、思ったよりも面倒なセールスなのが分かったので、オレも玄関に出てみた。
すると若い男が玄関のドアが閉められない位置に立っていて、出てきたオレを見て驚いていた。
嫁はオレを見るなり「この人帰ってくれない」と言う。
それでオレはその男に「何?」と聞くと「読売新聞です」と答える。
オレ:「あーいらんいらん」
読売:「は?」
オレ:「いらんと言ってんの」
と言ってドアノブに手を伸ばし、その男をドアが閉められるところまで後ずさりさせる。ドアを閉めようとすると「じゃあそれ返して下さい」と言う。嫁の手を見るとビール券やらいろいろ渡されていたので全部そいつに返し、ドアを閉め鍵をかける。で、嫁に「何でドア開けたの?」と訊いたところインターホンでは「配達です」と言ったから宅急便だと思って開けたとの事。卑怯な手を使う奴だ。開けた時「新聞の配達です」と言ったらしいので、それで整合性を保とうとしているのだろうが、配達を頼んでもいない場合、それは配達とは言わんだろ。といっても「整合性」なんて言葉も知らんような奴だったが。
嫁が手に持っていた物も強引に渡されたものらしい。
追い返した後、その男の写真を撮っておけばよかったと思った。
新聞の勧誘には東京での一人暮らし中にも何度も嫌な思いをさせられたが、真っ先に思い出すのは1990年の秋の夜の事。当時住んでいた立川のオレの風呂無しアパートのドアがノックされ、開けると読売新聞の勧誘だと名乗る中年男性がいた。確か二人。で、今日の嫁と同じように要るともいわんうちにビール券を握らされ、3ヶ月だったか半年だったかとにかく短期でいいから契約してくれ、と言われた。しかしその日は読売ジャイアンツが西武ライオンズに4連敗という不甲斐ない負け方で日本一を逃した日。ジャイアンツファンのオレは全く面白くなかった。そのせいか、後になるとエラい強気な対応をしたもんだと自分の事ながら恐ろしくなったのだが、その時オレは握らされたそのビール券をその男のスーツのポケットに突っ込み、「こんなの要らんから、ジャイアンツをもっと強いチームにしてくれよ」と言った後、その男の両肩に手を伸ばし、クルッと反転させた後背中をドンと突き飛ばして玄関の外に出した。
その後我に返って、この二人に外で待ち伏せされてエラい目に遭わされるんじゃないかと恐ろしくなったのも覚えてるが、当時の新聞の勧誘と言えば本当にそうした事をしかねない事を口にしたものだ。友人の中には勧誘(読売ではない新聞)を断ろうとすると「夜、外を歩く時は気をつけろ」とすごまれ、しぶしぶ契約した奴もいた。
インターネットの普及の影響か、引越し前の東京ではそうした強引な勧誘がなくなっていたが、地方にはまだまだいるらしい。
ったく油断出来んよ。
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