大学助手として関わった最初の学年に提出物を期限までに出した事が一度もない、そういう意味ではダメ生徒ではあったが面白いセンスの学生がいた。彼もオレを面白いと思ってくれたのか、よくオレの所属する研究室に遊びに来て、めざとく酒を見つけては飲んでたのだけど、ある時から彼は留学生を連れてオレが所属していた研究室に出入りするようになり、それ以来彼がいなくても外国人だけが研究室に出入りするようになってしまった(結局彼は大学を中退し、留学生は頼る人がいなくなり、オレのところばかり来るようになってしまった)。
そうして出入りするようになったドイツ人の一人がある日、どこかで地下足袋を見て大層気に入り、これは絶対にヨーロッパで売れる、特にレイブパーティーに入り浸ってる奴は飛びつく、だからなんとしてもヨーロッパで売り出したいと言って地下足袋メーカーに行き、直談判して見本として数足貰ってきた。
そして次にカタログを作りたい、お前のガールフレンドが自分のイメージするモデルに近いから是非モデルをやってもらえないかと頼まれた。場所は新宿。
オレは撮影当日彼女に同行する事になってたので集合場所に一緒に行ったのだが、そのドイツ人の気が突然変わりオレにもモデルをやってくれと言い出した。突然だったら地下足袋がねーじゃねーか、と思ったが、彼は何種類もの地下足袋をいつもカバンに入れてたのでそれを急遽オレが履き撮影開始。カメラマンもちゃんといて、ただのTシャツだけど一応彼女の分の衣装も用意されたちゃんとした(?)撮影。
地下足袋履いたオレと彼女、アルタ前の歩行者天国の中で手をつないでスキップしたり、訳分からんポーズを付けられたり、「Shigeto, smile!!」と時折怒られて、笑顔で見つめ合ったり。でも足下は地下足袋。
彼は別に現代美術の作品として撮影をしているのではなく、コマーシャル用として撮影してる。ビジネスです、ビジネス。これでビッグマニィをたたき出そうとしてる訳で、アディダスとかプーマと同じ土俵で金儲けしようと考えている訳です。笑わせる気は毛頭ありません。至って真面目です。でも新宿で地下足袋履いて笑顔でスキップしてる男女、その光景を撮影しているカメラマン、カメラマンとモデルに指示を出す身長2メートルの西洋人、彼が履いてるのも地下足袋(なんか知らんが途中で履き替えた)、というグループがやってる事はビジネスには見えないでしょう、きっと。
彼は次第に気持ちが昂っていき、日本のイメージをより強く出すために某家電量販店の中で撮影をしたいと言い出し、交渉。当然断られたが、店の前で撮影を始める。店員怒って出てくる。「店を撮ってるのではなく風景を撮ってるんだと説明してくれ」とドイツ人に頼まれる。言ってみる。それも受け入れてもらえず。地下足袋履いた変な集団の頼みなんて受け入れてもらえんよな、普通。というかこの手の店の馬鹿丁寧な接客を裏返すとこうなるのかと思ってしまう程怒ってた。
その日は新宿駅周辺を中心に朝から日が暮れるまでいろいろなところに行って撮影したのでかなり疲れた。
途中休憩を何度か入れてくれたけど、なんせ履いてるものが地下足袋だから店に入っても笑い声が聞こえると自分たちが笑われてるような気がして落ち着かんかった。
彼はそれから間もなくしてモデル代はビジネスが軌道に乗ったら払うと言い残し、ドイツに帰国。
しばらくしてその時の写真が届いたが、彼からはそれ以後連絡はない。
いくら珍しいとはいえヨーロッパで地下足袋がそんなに売れるとは考え難く、こうなる事は予測がついてたけどさ。
よしおかさん、地下足袋はどうにかすれば人気出る可能性あると思います。
でも、もっと忍者の人気が出ないとだめだと思いますので、寅一とセットでモデルにはかせて、カッコよく見せていこうと誰かがやればいいけど、誰もしないと思います。
以前、地下足袋を履いて彫刻をしていたら、それをコソボ人が異常に気に入り、しかたなく日本からコソボに送りました。
一緒に送ったハイライトは、煙草は吸わないからいらない、と言われました。
Posted by: くぼちん | 08/14/2009 at 12:23 AM
実はミラも日本に来た時に地下足袋をエラく気に入って履いてたんだよね。
久保田が地下足袋を送ったコソボ人とミラ、旧ユーゴスラビアの人の中には少なくても2人は地下足袋を履いてる人がいるという事です。あーあと、ドイツに行けばこのドイツ人も履いてるはず。
親指の部分が別になってるのがカッコいいんかなー。
しかし、レイブパーティーに集まってる連中が皆地下足袋履いて踊ってるという状況はやっぱり想像しにくいのだけど。
久保田、折角そこまで具体的なイメージと売り出し方を思いついてるならやってみてはどうでしょうか?
Posted by: mohican | 08/14/2009 at 07:34 AM
もう既に売り出している人はいて、店で並べられているのを見た事はありますが、そんなに爆発的に売れるものではないと思います。僕は作業のとき普段寅一と足袋は履いていて、注目されますし、そういう恰好をしたドイツ人も見たことあります。
でも、10000人に一人それがカッコイイと思うヤツがいても、利益にならなそうです。じょいふる本田でバイトした方が楽かもしれないです。
レイブパーティーでは、一人一本だいこんを持たせればいいと思います。
Posted by: くぼちん | 08/14/2009 at 02:27 PM
あーそういやゾットさん(だっけ?)も友人に頼まれたと言ってここ行ってニッカポッカ買ってたな。http://www.mannen-ya.co.jp/
アート系の人には特に日本の作業着はかっこ良く見えるのかもしれんね。
それにしても久保田、いろいろな国行って制作してるだけに観光じゃ見ないような場所も見てるんだなー。
Posted by: mohican | 08/14/2009 at 06:11 PM