何回か前の日記で触れた、空き巣の逃走犯に間違われた話。
1993年2月のある日の昼過ぎ。オレは大学2年だったのだけど、大学は入学試験期間中で1ヶ月近く入構禁止になって制作も出来ないから、新学期まで出来るバイトを探す為に求人情報誌を買いに行った。その帰り道に空き巣の犯人と間違われて警察署にしょっぴかれた。
確か14時頃だったと思う。出かけるにしても中途半端に時間を持て余してたので当時住んでた立川駅近くのビデオレンタルに寄って数本ビデオを借り、アパートに向かって駅前通りの道を歩いていると、パトカーが2〜3台、オレの進行方向と反対に向かって走っていった。それを何となく気にしつつ、そのまま歩いて当時の立川警察署の前に差し掛かると、パトカーがもう1台出動しようとしていたのだが、そのパトカーに乗ってた警察がいきなり「ちょっとそこの人!!止まって!!」とオレに声をかけてきた。警察はすぐにパトカーから降りて近づいてきて、「今どこ行ってきたの?」と質問。その後も名前やら仕事やらその日1日の行動やら、いろいろ訊かれた。何が何だか訳が分からないまま訊かれた事を答えてるうちに、まわりには野次馬があっという間に集まり始める。そりゃあパトカーから警察官が飛び出してきて通行人に尋問してる図は、何事かと思うに違いない。そんな状況のせいか、「ここで話すのもなんだから署に来てもらえないかな?」みたいな事を言われて警察署に連れて行かれた。これは任意同行というやつか?
連れて行かれた場所は昔の立川警察署の3階か4階。最初は警察が何人もいるちょっと広めの部屋に連れて行かれて、確かそこで、パトカーは、家主に犯行現場を目撃されて逃げた空き巣犯を追ってたのを知らされた。犯人の特徴は「長身・革ジャン・ジーパン」。それでオレが怪しいと思ったらしい。そんな奴、オレ以外にもいるだろ!!そもそも逃走犯がわざわざ警察署の前を通るかぁ!?と今なら言えるが、そういう状況に置かれるとそんな強気な態度はとれなくて、それどころか、何故か従順な態度になって訊かれた事全てに素直に答えてた。
次に、机を挟んで警察と向かい合う小さな部屋(テレビドラマで見るような取調室のような閉じられた空間ではなかったけど、あそこも取調室なのかもしれない)に連れて行かれ、そこでも最初の警察の他に刑事が来たり、入れ替わり立ち替わり入ってきた何人かの警察に同じ事を訊かれた。何度も同じ事を訊くのって、アリバイにボロが出ないか調べてるんかね?その際、持ち物を全部机に出して見せてほしいとも言われた。オレはもちろん空き巣なんてやってないのだけど、でもそういう状況にあると、「何かおかしなものが鞄から出てきたらどうしよう・・・」という不安がよぎる。もちろん、おかしなものは出て来なかったけど、しかし鞄の中には直前に借りたレンタルビデオがあり、その中にはエロビデオもあった。それを見て警察は「こういうコが好きなんだー」みたいな事を言って、場の空気を和ませようとしていたのは覚えてる。その時オレがどんな気持ちになったかは覚えてないけど、普通に考えればやっぱり嫌なもんだろ。
そうこうしているうちに目撃者が到着したとの事で次に連れて行かれたのはマジックミラーの部屋。そこでも警察が一緒に部屋に入って尋問が続きつつ、鏡の向こうから目撃者がオレを覗いてたようだ。警察からは鏡に向かって立て、横向け、後ろ向け、サングラスをかけろ(オレの持ち物にあった)、といろいろと言われ、その通りにやらされた。
オレは空き巣なんてやってない!!
けど、もし目撃者が「この人かも」なんて言ったら、ここから出られなくなる訳で、そんな事を考えて、その時はすごく不安になったのを覚えてる。
幸いというか、当然、オレはシロなのだけど、納得いかなかったのは、オレが犯人じゃないと分かっても鏡の向こうにいる目撃者とはオレは会えない事。何もやってないのに一方的に覗かれただけ。
そうして3時間くらいしてようやく解放されたのだけど、マジックミラーの部屋から出たところで「協力ありがとう、もう帰っていいから」と言われただけであっさり終わった。協力というより迷惑だろ。しかし「迷惑かけてすみません」とは言わない。きっと「謝るな、謝罪すると非を認めた事になる。非を認めると責任問題に繋がる。」と言われてるんだろうな。オレも警備員やってた時に事前講習でそう習ったし。
数日経って、レンタルビデオ屋にビデオを返しに行ったら、返却カウンターのスタッフがオレの方を指差してスタッフ同士で話してるのがガラスに写って見えた。警察が「長身・革ジャン・ジーパンの男がビデオを借りにいったか?」という連絡入れたんだろうな。それで「警察からの電話、あいつの事だよ!!」ってな会話してたに違いない。
警察に接点もたれると、たとえ犯人じゃなくても、オレの個人情報がいろいろな警察の手帳に書かれたり、借りたエロビデオを知られたり、ビデオレンタルで後ろ指を指されたり、面倒くさい事になる。いい事一つもない。
「突破者」の著者・宮崎学氏はグリコ森永事件のキツネ目の男に間違われたりした壮絶な半生をネタにしてベストセラーを生んだけど、これくらいのことじゃあ、本に出来る程のネタにはならんよなー。中途半端だよ。
それはそうと、オレはこの前年の2月には警備員のバイト中にヤクザと思しき人に因縁つけられ、その工事現場の工事が全てストップして警察が出動する程袋だたきにされたし、この翌年の3月には門脇と一緒に行ったバルセロナのバルで、目尻からあごにかけてすごい傷のあるものすごく怪しい男にいい女を紹介してやると絡まれて、強引にタクシーに乗せられ別の場所に運ばれて、そいつが電話してる隙に逃げてきたり、更に4月にやはり門脇と一緒に友人のライブを見て明け方アパートに帰ったら、隣りのアパートで殺人事件があってオレのアパートに行く道路が「keep out」のテープの中にあって、パトカーが入り口を塞いでたり、という感じで、大学にいる間、春先はいろいろあった。
その辺の事も気が向いたら書きます。
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