先日の日記で書いた厨子の写真をアップします。
お客さんのご要望は六角形の厨子でした。
厨子の制作依頼を頂いたのは初めてだけど、お客さんは「六角形が好き」「六角形はかわいい」とおっしゃってて、ご自宅にあるバードテーブルも六角形の物が欲しくて知り合いの職人さんに作ってもらったんだそうで、六角形に思い入れを持っておられるのがすごく印象的なご注文でした。
オレは東京にいた頃には日本各地や外国から集まってきた人達との交流があったし、1年間海外に住む機会もあったし、そしておそらく人生の半分はもう生きてきた、そんな年齢にはなってるからそれなりにいろいろな価値観に触れてきたように思ってたけど、すぐそばに(北海道の方からのご注文)、「六角形はかわいい」という今までに触れた事のない価値を持ってる方がいるのを知り「世界にはまだまだ知らない事が沢山ありそうだ」とか「世界って広い」としみじみ思いました。
厨子のデザインはオレに任せて下さるとの事だったので現代の居住空間を意識してシンプルなデザインにさせて頂きました。
材料はナラ(正目)で、扉の部分に一部ウォールナットを使ってます。
難しかったのはこの形の一番の見せ場ともいえる屋根。
そこの加工に入る前、今回もやっぱりランバード吉野こと、吉野君に相談してしまいました。
吉野君、ありがとう!!
吉野郁夫 | 木の家具
吉野君からのアドバイスを参考にしてショートケーキのような形を6個つなげた六角形を作り、そこから屋根の形を少しずつ彫り出していきました。
取っ手と蝶番の金具もシンプルな物が欲しくて、でも無表情なのはいやで、地元の星槎国際高校の教諭で金工作家・牧野先生に相談させて頂き、アドバイスを頂いて探しました。
牧野先生ありがとうございます。
そしてお客さんにオレが彫刻を作っていることをお伝えし、中に入れる仏像も作らせて頂きました。お客さんは厨子を30センチの高さでご希望されてたので、そこから逆算していくと仏像本体の高さは6センチ。
6センチ!
デカイ作品に憧れてデカイものばかり作ってきたオレにとって、このサイズの彫刻制作はもちろん人生でもっとも小さいサイズ。想像してはいたけど想像以上に時間がかかった。仏像の材料はイチイです。
(イチイ(北海道ではオンコとも言う)は赤みのある木で、かつ仏像が小さいので年輪と形の線が重なってしまい、写真がちょっと見づらくなってしまいました・・・。)
仏像の制作については大学の同期で、木彫家として活躍している岩崎に相談させてもらいました。
岩崎、ありがとう!
木彫 岩崎 | 岩崎努の世界
初めてづくしのご注文だったけど、相談出来る作家が知り合いにいたお陰で無事完成させる事ができました。
仏具関係の物を作るスペシャリストなら一人で厨子も仏像も作るなんて事はあり得ない、というか仏像でも仏像本体・光背・蓮花座を別々の人が作ってる場合もあると思う。実際、仕事の内容だけでなく頭の切り替えも大変だったけど、貴重な経験をさせていただけたのは間違いなく、こんな機会を下さったお客さんにはただただ感謝です。そして何よりお客さんに喜んで頂けてすごく嬉しかった。
木製品の制作ならなんでもお話を伺ってる現在のオレは何者か分からない感じですが、とりあえず日々出来る事をしながら一生懸命生きてます。
そして今はあるお店の内装リニューアルのご相談を頂いております。そこは大御所作家さんがイメージ作りに少し関わっておられる店舗なので、その大御所作家さんのイメージに沿いつつ新しい内装にしなくてはならず、それは簡単ではなく新しいアイデアはなかなか浮かびません。
大変です。が、やりがいはあります。
頑張ります。