ん?
これは桑田圭介のTSUNAMIじゃないか?
とその時オレは思った。
それは2005年3月下旬。
大学の後輩に、職場の同僚のバンドが出るからと言われて聴きに行ったスマトラ沖及び中越地震被災者のためのチャリティーコンサートでの出来事。バンドはその企画のために組まれた即席バンドとの事で、正直まとまってるとは言い難かったけど、演奏者と聴き手が普段から交流のある間柄という関係もあって聴きに集まった皆さんは大層盛り上がってた。後日聞いた、その日に集まった寄付金の金額からも皆さんが満足したのが分かった。ただオレは演奏者と交流のある人間ではなかったので、聴き手の皆さんとその盛り上がりを共有出来ず、一人静かに演奏を聴き続けてた。
そうしてウイルソンピケットとか、ビートルズとか、洋楽のコピーが続いた後、曲間のMCからそろそろコンサートが終わりに近づいてるのかなと感じたところでTSUNAMIが始まった。
普段、J-POPをあまり聞かないオレは確信が持てず隣りに座っていた後輩に確認したところ、彼はそうだと答えた。
なんでも、そのボーカル氏は桑田圭介の物まねが上手いのが仲間内で有名で、それでよく桑田圭介の歌を歌うんだそうだ。
あ〜それでか。
とは思わなかった。
!!
津波と地震の被災者の為のチャリティーでTSUNAMIを歌うのか?!
と思った。
まあ、このイベントの立案者と思われる方がMCで、決して忘れてはならない大変な出来事があったという事、それをどうしても伝えたくて上手くもない演奏を披露してるのだと言ってたので、そのコンセプトで選曲するならこれ以上の曲はない。
それと、後輩曰く、このボーカル氏がTSUNAMIを歌うのは毎度の事だから、津波被災者のためでもあるチャリティでTSUNAMIを歌ってる事に違和感を感じてるのはおそらくオレだけであろうとの事。
そうか・・・。
しかし、そうなのかもしれんが・・・。
オレはレッチリがカバーしてるジミヘンのFireが大好きである。昔バンドでベースを弾いてたし、だからFireを聴くと今でも機会があればバンドでコピーしてみたいと思う。が、その機会がもし「火事の被災者のためのチャリティコンサート」であったら演奏出来るか?
と考えてみた。
オレには出来んな。小心者だし、その辺り結構気にするタイプだから。
これは演奏したから良いとか悪いとかいう事ではなく、価値観とかセンスの問題。オレがスキンヘッドだったりモヒカンだった20代の頃だったらもしかしたら演奏してたかもしれんし、演奏出来ればパンクでカッコいいかもと思うところはある。
ただ、今は出来ん。
だからこの人達はいろいろな意味ですげーなと思った。
それから約一ヶ月位経って、そのボーカル氏が今度は絵の展覧会を開いてると聞いたので見に行った。スマトラ、及び中越地震被災者のためのチャリティコンサートでTSUNAMIを歌う人だから、絵にもそうした常識にとらわれない、パンクな要素を期待して見に行ったのだけど、作品は全然パンクじゃなく、至って常識的なアプローチで、ほのぼのとしたもの。
そんな作品を見てこの人の素のセンスはきっとこちらなんだろうなと思ったオレは、あのTSUNAMIは後輩が言うようにいつものように歌ったのではなく、奇をてらって歌ったように思えてしまうのだけど、ま、それがどっちだという事を探りたいのではなく、オレはそのコンサートでTSUNAMIを聴いてビックリしたという話し。