今週は火曜日から木曜日まで東京にいた。新製品がいくつか出来たので、その営業です。
そのうちの一件は、ある彫刻の制作依頼を下さったお客さんとの打ち合わせ。
「彫刻を作りたい」と言って脱サラしてから4年目になるけど、そこに少しだけ近づけた。依頼を受けたものは彫刻といっても一点ものではなく、かつオレが今まで作ってきたものとはモチーフもタッチも大きさも全く違うので、オレが名乗らなければオレが作った物だとは全く分からないものだけど、お客さんがマケットを気に入って下さったのが嬉しかった。
40才ヨシオカ、これで少しは自信をつけられそうな気がするよ。売り出されたらあらためてお知らせします。
今回の滞在中、久保田と木島君、Iと飲みに行った。
久保田は今秋ポルトガルで制作と展示の予定があり、また3ヶ月日本を離れる。多分オレは年内にはもう会えないのだけど、前にここで触れた芦別出身のライター角幡唯介さんの著書「空白の5マイル」を以前から渡したかったので、国分寺に出向いて木島君が度々利用するという店で飲んだ。
いろいろな話をした中で今パッと思い出すのは、最近の学生が良い学生ばかりだという話。いや、学生が良い学生なのは良い事なのだけど、しかし、良いところしか見えないと、どこかで無理してるのではないかと心配になるものだ。学生のうちは、飲んで羽目をはずすとか、作品に対して先生から否定的な事を言われた時に食って掛かるとか、そういう事をしても良いと思うのだけど、そういう場面が全然ないらしい。そういえば、オレがまだ東京にいた頃に久保田と一緒にある店に飲みにいった時に、偶然オレの知り合いのさわやかナイスガイが入ってきて同席した事があるのだが、彼が発する発言はどれも良い子的、かつ振る舞いもさわやか(ちなみに彼は東大卒)で、彼のそんな良い子的な言動を散々見せられた久保田が「テメーさっきからさわやかな事ばかり言ってるけど、家帰ったらふすまとふすまの間にチンコ挟んで「うー気持ちいい」とか、そういう変態な事してんだろ」と突っ込んでたのを思い出した。それに対しても彼はさわやかな笑顔で切り返して、まあ、もし彼がふすまとふすまの間にチンコを挟むような性癖があったとしても、それ位の変態性でバランスを取れるならいいのかもしれんけど、とにかくひたすらに良いところばかり見せられると、この人は本当にこういう人なんだろうかと懐疑的になってしまうものだ。
学生がそうなってしまうのは、社会のシステムや教育的に何か問題があるのかね?
そんな話をしているうちにいつもの事ながら大井町にとってあったホテルに帰れなくなってしまったので、シャッターが閉まった国分寺駅の前に座り込み、始発を待った。東京にいた時はしょっちゅうあった事とはいえ、髪が半分近く白髪になってしまった40才、一応は妻子ある身でそんな状況にあるのはやはりちょっとマズい気がしたよ。そんな、凹み気味な気持ちを紛らすために、携帯でなでしこジャパン対スウェーデンの試合を見てたら、近くにいたキャバ嬢二人が、客との同伴出勤を許さない店の方針に文句を言いまくってたのが気になってしまい、試合を見つつ、二人の会話を盗み聞きしてた。田舎者のオレにとってはこういう会話を聞けるのが東京ならではで、気になってしょうがない。そのうちの一人が文句を一通り言った後、その日ついた客に朝7時にモーニングコールを入れる約束をしたので、7時まで寝られないと言ってた。これは健気な行動なのか?それともプロフェッショナルな対応なのか?分からんけど、半分酔いが残ったまま始発を待つ40才よりは、キャバ嬢にモーニングコールを頼めるくらい、金を気にせず飲む方が40才的行動のように思えた。といいつつオレは、モーニングコールを頼む前にキャバクラに行く勇気がまずないので、人生で1度もキャバクラに行く事はないだろうけど。
さて、最後にちょっと真面目な話題を一つ。
今回の東京滞在は3月の震災後、初めての滞在だったのだけど、北海道で感じていた震災の影響と東京のそれとに差を感じる場面が度々あった。まず、東京に着いてすぐの品川駅で、猛暑にも関わらず全身カッパのようなものに身を包み、マスクを着用している女性を見た。その人は、もしかすると夏の直射日光を極度に嫌う、あるいは避けなければならない体質の人なのかもしれないけど、オレにはその人は原発事故対策としてそういう格好をしているように見えた。その格好が原発事故対策だとして、彼女がそういう格好をするのは、飽くまでもその人にとって不安を取り除けくために必要な対策なのだろうけど、しかし真夏にそこまでされては、周りが死んでも自分だけが生き残ろうとしている、生き残れればいい、それくらいのエゴを感じてしまうし、その人には生きる事自体が生きる目的のようにさえ思えた。
あと、今回会ったお客さんの友人とか、同僚とかそんな近いレベルで、震災直後から東京を離れていたり、現在離れる事を計画している人がいるのを何人も聞かされた。そういえば、震災後1ヶ月程して東京のある友人から届いたメールに、原発事故についての不安が長文で書き綴られていた事があった。その後しばらくして、その人からあの時の自分はおかしくなっていたというメールが届いたけど、今回東京に行ってみて、自分自身は以前と変わりなく生活しようとしても、そういう格好をしている人がいたり、震災直後から東京を離れている人が周りにいたり、計画している人がいる、という状況に置かれたら、そういう心境に追い込まれてしまうのかもしれないと思った。
オレは今は北海道の田舎にいるから割と以前と変わりなく生活出来てるけど、そういう環境にいると同じように出来るかどうか、ちょっと自信がなくなったよ。
Comments