少し前の事。
北日本精機さんの小林英一会長とお会いする機会に恵まれた。
北日本精機さんは世界シェア70%超の小型のベアリングをはじめ、精巧なベアリングを生産していて、それがないと動かないものが沢山ある縁の下の力持ちのような会社。
http://www.ezo-brg.co.jp/
お会いするきっかけとなったのは小林会長が所有されているゴールドシップ号が菊花賞で優勝した事。
ゴールドシップ(wikipedia)
2012 第73回菊花賞 (youtube)
オレは競馬の事はさっぱり分からんけど、菊花賞の前にゴールドシップ号が優勝した皐月賞は名前くらいは知ってる。競馬がさっぱり分からんオレでも知ってる位のレースだからそれがすごいレースだって事も一応分かる。そのレースに優勝したゴールドシップ号がすごい馬だって事も漠然とではあるけれど分かる。そしてそんなすごいレースで優勝したすごい馬のオーナーさんが芦別の会社の会長さんと知っていて菊花賞が気にならない訳がない!
テレビでレースを観た後すごい興奮した。
そして興奮冷めやらぬ翌朝、ゴールドシップ号の優勝が一面トップになってるスポーツ新聞を買って工房でその新聞を読んでたところで取引先のある企業の方からお電話を頂いた。
ゴールドシップ号の優勝をお祝いする記念品を作ってほしいとの内容だった。
依頼内容が目の前の新聞の一面トップと繋がっててびっくりした。
すげえ!!
鳥肌立った。
静かな口調ではあったけれど、お客さんは皐月賞と菊花賞をとった事がどれほどすごい事かをお話して下さった。
さらに「小林会長は絵画をコレクションされる程美術に関心をお持ちで、また芦別の事を気にかけておられる方だから東京から芦別に戻って物作りをしている吉岡さんの存在もこの機会にお伝えしたい」とまでおっしゃって下さった。
社交性ほぼゼロのオレが生きていられるのはこういう方がいらっしゃるからです。
本当にありがたく思った。
すぐにデザインを考えてご提案。そして制作。
G1優勝馬のオーナーさんとご縁を頂けるなんてオレの人生で二度とない事だろう。
そんな事を思い、お届けの際オレも是非ご一緒したいとお願いした。
さらにその時に自己PRをさせて頂こうと考え、オレの経歴書を作り、工房で作ってる製品とオレの個人的な作品のファイルを作り、新聞や雑誌で扱って頂いた時の記事をかき集めてファイルを作り、作品も用意し、お会いする時に話す事をずっとシミュレーションしながら前日の晩には既にちょっと緊張していた。
そしてお届けの日。
北日本精機さんの社屋に初訪問。もの凄く立派で広い会長室に案内して頂き、オレはとんでもなくビビってたのだけど、小林会長は気さくにご挨拶して下さった。
今年一番緊張した名刺交換の後お届けの品を見て頂くと、小林会長はそれを手に取って「いい仕事をするね」と言って下さった。お会い出来る事はもちろんの事、その前にまずは記念品を気に入って頂けるかも気になってガチガチに緊張していたのでそのお言葉を聞いてホッとした。
その後、カバンから作品のファイルを取り出して厚かましくも会長の横ににじり寄って説明をさせて頂き、さらに持ち込んでいた作品をテーブルの上に置かせて頂いてその説明をし始めた時に、会長の横にいらした側近の方が「会長、○○さんとの打ち合わせのお時間です」と告げられた。
それを聞いて、慌ててファイルやら作品を抱えて会長室から退席。
記念品の依頼を下さったお客さんから小林会長がオレとお会いして下さるとの連絡を頂いた時、オレは1時間くらいお話出来るのかなと何の根拠もなく勝手に思っていたのだけど、実際はご挨拶から退席まで15分程だったと思う。
話が中途半端になってしまい、お伝えしたいと思ってた事を全くお話出来なかったのは残念だったけど、でもいわゆる「分刻みのスケジュール」というのを目の当たりにし、しかも記念品のお届けの後に打ち合わせの予定が組まれていた企業はオレの聞き間違えでなければ日本中に知名度のある大企業だったので、北日本精機という会社が世界を相手に仕事をされてるのをあらためて実感し、自分の生まれ故郷のこんな小さな町にそんなすごい会社がある事にとても感動した。
さらに帰り道で今回の依頼主であるお客さん(会長室にお邪魔している間オレにほとんどの時間を譲って下さった)から小林会長が考えておられる今後の構想や夢のお話をお聞きして、スケールのデカさにビビってしまった。
すごい!カッコよすぎる!
と思いつつ、その話をお聞きしている時になんだかすごく恥ずかしくなった。
というのもオレは見てくれがいかついせいで、男らしいとかアニキキャラだとよく言われる。自覚はないものの悪い気はしない。というかいい気分である。調子に乗ってた。
そんな自分を思い出してしまったのである。
とはいえ小林会長に感じた男らしさやカッコよさを羨ましく思ったところでオレが今から小林会長のような事が出来るはずもなく、だからオレはこれからもこれまでと同じように自分に出来る事をやっていくしかない事も再認識。
やるしかねぇ。
まずはゴールドシップ号がまた優勝する事をお祈りしよう!
(相当強い馬らしいのでオレのお祈りなんてほとんど意味がないだろうけど)
そしてまたお会い出来る事を願おう!
見て頂いた作品は妊婦のトルソ。小林会長は「ここまでストレートな表現の作品は初めて見ました。あなたはきっと野性的な方なのでしょうね」という感想を下さったので、お話はほとんどできなかったけどオレの事は覚えて頂けたんじゃないかと思う。