4/3(火)
3年振りの海外旅行出発の日。5時に起床。海外に行く時、いつもは日暮里から成田空港まで京成スカイライナーを使って移動するのだけど、今回は渋谷から成田エクスプレス。というのは、キャッシュカードに付帯している海外旅行保険を使いたくて、その使い方をカード会社の人に相談したところ、そのカードを使って成田空港までの公共交通機関の支払いをしたところからその保険が使えるようになるとの事で、しかし日暮里駅構内に早朝にキャッシュカードで切符を買える場所があるか分からないとも言われたので、京成スカイライナーを諦め、前日のうちに最寄り駅のみどりの窓口で成田エクスプレスの切符を購入。という訳でまずは渋谷まで移動。
JR渋谷駅の改札で20〜30代の男性が一人のJR職員に片腕を掴まれ、もう一人の職員にいろいろと訊かれていた。何をやった人なのか気になったが(痴漢をするにしては早すぎる時間だし、キセル乗車ならダッシュかまして逃げられるだろうし)、そのまま成田エクスプレス用のホームまで移動。定刻に電車が入ってくる。渋谷始発と思っていたが既にかなりの席が埋まっていた。
オレが予約した座席は進行方向の反対向き。それがちょっと嫌だったが、すぐに寝てしまい、結局成田空港まで眠り続けた。
成田空港。
旅行会社で渡されたクーポンをチケットに交換する時間まで1時間以上あったので、その空き時間を利用して朝食を取り、その後、円をユーロに換金。5年前、初めてドイツに行った時は1ユーロ=120円台、3年前、パリに滞在していた時は1ユーロ=135円位、それが今じゃあ1ユーロ=160円とは。一体どうなってるんだ?
旅行会社から指定された時間より少し前にクーポンを航空券に交換し、チェックインカウンターに移動。以前は預ける荷物も検査があったはずなのだが今回はそれがなく、そのままチェックインできた。今回の荷物は重量制限23kgの半分にも満たない重さだったが、3年前、シャルルドゴール空港で荷物の事でえらい目に遭ったので、重量計に載せた時少しドキドキしてしまった。もちろん、その荷物には問題はなく、その他の手続きもスムーズに進んだので搭乗時間までにかなり余裕が出来た。しかし特にやる事もないのでさっさと出国審査を済ませ、搭乗ゲートに向かう。
今回の航空会社はスカンジナビア航空。
搭乗ゲート前のデューティーフリーで、今回ベルリンで世話になる久保田へのお土産としてハイライトと日本酒一升を購入しようとしたのだが、乗り継ぎ便利用者は機内持ち込み出来る液体100mlの制限に引っかかり、日本酒一升を買っても、乗り継ぎ地で没収されてしまうとの事だったので、日本酒は諦めてハイライトだけ購入。
10:55、時間通りボーディング。平日だったし、割と時間を作りやすい大学生にしても新学期が始まったばかりの時期だったせいか、乗客はかなり少なく、オレが座った座席の列は反対側の端に一人いただけだったのでゆったり座れた。
オレの斜め前に座っているCAは長身、金髪の女性で、顔立ちもオレがイメージする典型的な北欧の女性で笑顔の素敵な方だったが、何故か膝まであるブーツを履いてる。それが気になった。機内用の靴に履き忘れてるのだろうか?
訊く気はない。訊く気はないが、すごく気になる。だからドイツ到着後必要になる英会話のためにその疑問を英文にしてみた。
Why do you wear such a boots?
これ、合ってますか?
結局、このCAは最後までその靴のままだった。
海外旅行に行く時、オレはいつも機内誌で北方領土が日本領となっているのか、ロシア領となっているのかを確認するのだが、スカンジナビア航空はアジア方面に就航している便が少ないせいか機内誌の日本付近の地図は詳しく掲載されておらず、その件について確認出来なかった。
最初の機内食は照焼きチキンとライスと寿司とパン。どれも美味しかった。が、組み合わせがへんじゃねーか?
機内では本を読んだり、「世界男根彫刻大会」のマンガの下書きを描いたりして、疲れたらたまに寝て過ごした。
一度、となりの外人カップルが今にも始めそうな勢いで絡み合ってる時に女の背中の入れ墨が見えたのだが、それは入れない方がいいんじゃないかと思う汚い入れ墨だった。
言う気はない。言う気はないが、気になったので、自分の気持ちを英文にしてみた。
Your tatoo is so stupid.
合ってますか?
現地時間の朝食の時間に合わせた2回目の食事はそば、サンドイッチ、フルーツ。やはり組み合わせに違和感を感じたが、美味しかった。まあ、オレにまずいと思われる料理は相当ヤバいのだが。
その後1時間程で乗り継ぎ地のコペンハーゲンに定刻に到着。
乗り継ぎがある人はここで再度手荷物検査がある。日本での手荷物検査の場合、乗客からの荷物を検査機前にいる係の人がベルトコンベアの上に載せて検査を受ける。このコペンハーゲンでも係の人はいるにはいるのだが、そこにいた女性は「You have to push your baggage.」と言うだけで何もしない。日本のシステムに慣れてる人間には気分が悪い対応である。
テメーは一体何故そこにいるんだ?むしろいない方が乗客は押すと思うぞ。
と思ったが、あまりにも強気なその女のしゃべり方にビビって、そそくさと押し入れた。
もうベルリンは目と鼻の先。しかし、ここで少し待ち時間がある。
掲示板に次に乗る飛行機の情報が表示されてなかったので、空いていたベンチに横になって時間を潰す。
しばらくして掲示板にオレが乗る飛行機の情報が表示されたが、何故かその便だけ搭乗ゲートが表示されない。何でそんな中途半端な表示をするんだ?
オレはこういう目に遭う事が多い。
どうなってるのかと空港スタッフに訊いてしまおうかと思った頃にようやく表示された。それを確認してから表示されたゲートの方に向かうとパスポートコントロールがあった。乗り継ぎがあってもコペンハーゲンからヨーロッパ内に向かう人はここで入国審査を済ませてしまうようだ。
次に乗ったのは座席が左右2列ずつしかないプロペラ機。
そんな小さな飛行機にオレよりでかい男二人がCAとして乗り込んでいた。あんたら二人でかなり重量を食ってる気がするのだが。そんな二人が緊急避難時の脱出方法を説明している姿はギャグっぽかった。
彼等を見ながら、オレはお前らをCAと呼ぶのはちょっと無理があると思うぜ、という英文を頭の中で作った。
Are you serious?
これは合ってると思います。
わずか50分ほどでベルリンテーゲル空港に到着。
ベルリンテーゲル空港。行く前にWikipediaで調べてみたところ、1948年、ベルリンが封鎖された時にわずか49日で滑走路が作られた飛行場だと書かれていた。もちろんその頃よりは大きくなってるだろうが、その成り立ちが垣間見える感じの大きさだった。今まで2度、フランクフルト空港からドイツに入った事があるのだが、そちらの方が大きい。そういや「地球の歩き方・ドイツ」も最初に紹介しているドイツの街はフランクフルト。つい十数年前まで東西に分かれていた国の、東側にあった首都という、特殊性に触れた気がした。もし朝鮮半島の二つの国が統一されて、首都が平壌になっても、きっとドイツと同じようにソウルが最初に紹介されるだろうな。しかしあの二つの国は本当に統一されるんかいな。両国の人が一緒に統一旗を振っているのはテレビでよく目にするが。
東京で預けた荷物はすぐに出てきた。それを持ってゲートを出ると、すぐそこに久保田が待っててくれた。
2か月振りの再会。今までは、あとで登場するミヒャエルを頼ってドイツに来ていて、それはそれで心強かったが、今回程頼りになる相手はいない。なんせオレはドイツの旅行ガイドすら持って来なかった。安心しきってる。
外に出てみると結構寒かった。出発前の東京も雨が降ってたせいもあって寒かったがそれより寒い。
すぐにバスに乗ってアレクサンダープラッツまで30分程かけて移動し、そこでトラムに乗り換える。
トラムの中からケバブ屋が見えると久保田がすぐに「吉岡さん、食べたいでしょ」と言う。
はい食べたいです。パリにいた1年間、どれほどケバブを食べた事か。
久保田の部屋に着いて荷物を置いてすぐにケバブを買いに行く。2.5ユーロ。日本円に換算すると400円。レートの関係で以前より高くなってしまったが、あの大きさを考えるとまだ許せる範囲。ビールも一緒に購入し、部屋に戻る。
久保田の部屋には、フクカワ君という、以前久保田の作品の制作を手伝った事がある某美術系大学の学生が前日から滞在していた。寝ていたのか、ケバブを買いに行く時彼は出て来なかったのだが、オレと久保田がケバブを買って戻り、ダイニングでケバブを食べてると、彼も現れ、日中、近くのスーパーで買ったソーセージとパン、サラダを用意して食べ始めた。その後3人でビールを飲みながら2時間程話をし、いい具合に酔ったところで就寝。
今日のオレのベッドは久保田の部屋の家主、マントラのベッド(久保田は自分の、フクカワ君はゲスト用の簡易ベッドを使ってる)。久保田はマントラのアパートの一部屋を借りている。マントラはフランクフルトに住む、友人ミヒャエルの友人で、6年前、そのミヒャエルがオレが助手を務めていた大学に研究生として来ていた時に日本に来た事があるのでオレも面識がある。奴にも会えると思っていたのだが、奴は海外での自分の展示と、イースターに合わせて実家に帰る関係でベルリンにはいなかった。
写真は本文とは直接関係ありませんが、どちらもコペンハーゲンで撮ったもの。遠い北欧の地で、日本語のサインがあったのはちょっと嬉しかったです。トイレはお国によって形も大きさも違います。これは位置が非常に高かった。
続く